SHIBUYA STREAM Hall case study interview

星の見えないこの街で。
みんなで「灯り」を創って灯し、天の川を生みだしてアートと音楽を楽しむコンサート。
そんな企画を主催されたオノマトペルのお二人にインタビューしました。

2023年7月1日に渋谷ストリーム ホールにて開催されたTOKYO 天の川。
今回は本イベントの主催者であるオノマトペルの2名に当日のイベントの様子や渋谷ストリーム ホールを会場に選んだ背景についてお伺いしました。

オノマトペル シンガーソングライター横沢ローラとピアニスト工藤拓人のユニット。
リズム、言葉遊びや、宮沢賢治をはじめ寓話的な物語を取り入れた詞の世界観と、クラシック印象派やジャズ、ポップスも融合した摩訶不思議でクセのある音楽を作る。オーガニックで温かみのある曲から、電子音楽まで幅広く、エキセントリックでファンタジックな祭感を好む。予想しにくいライブでは、2人のデュオ、バンド、弦楽四重奏や管楽器の編曲も加えた大編成まで、変幻自在なスタイルで演奏。お酒や人やお祭り好き。

――7/1(土)TOKYO天の川は、ストリームホールでも開催したことのないタイプのイベントでした。主催の方々のことイベントのことをお聞かせください。

今回のTOKYO天の川というイベントを主催しました、オノマトペルというバンドの横沢ローラ(Vo)と工藤拓人(pf)と申します。

TOKYO天の川を主催したオノマトペル

「TOKYO天の川」と題した今回のイベントを企画したのは1年以上も前、2022年の5月でした。コロナで会えない、集まれない数年を経て、来年の七夕の頃には盛大に集まって、歌って、踊って、飲んで、そして星に次なる願いをかける日になったらな、という私たちの「願い」をこめ、企画しました。 七夕に「短冊に願い事を書く」という日本の文化や、そして、せっかくこの頃の夏の空には1年に一度会えるという織姫と彦星が天の川を渡っているはず..だけれど渋谷の空にはきっと星がみえないんだろうな…ということも全部ひっくるめたイベントです。

主催が自分たち、ということはスタッフもお客さんも知ってる人ばかりだから…。好きな人たちがこぞって、みんなで自分らしい「灯り」を竹や紙で作り、光るフェイスペイントや光るお神輿を作り、ライブショーを楽しみ、最後には会場の電気を全て消して暗闇の中で自分たちの「天の川」をつくりだす、という催しでした。 実は、僕たちはこどもの友達がいるわけじゃないので、5人ぐらいしか予約者を把握していなかった。当日、0歳からおじいちゃんおばあちゃんまでが楽しんでくれているのをみてびっくりしました。

小さな子供たちも多かった!

「みんなで自分たちの天の川をつくる。こどもはかけまわり、大人は飲んだくれてていい。みんながそれぞれに楽しみ、我々ミュージシャンはいつもどおりのオリジナル音楽を届ける」 という、描いた通りのイベントの風景が広がっていました。

――変わった点としては、イベントの時間帯によって、みんなが移動しながら楽しむ形になっていましたね。

そうなんです。前半は5F、後半は6Fに大移動、というような。 開場時間の11時〜15時には5Fの「ものづくりフロア」にて、さまざまな「灯りづくりのワークショップ」が行われました。 ショータイムは16時からですがステージの上のミュージシャンたちだけではなく、本番の最初と最後にあるクライマックスに、フロアに居るみんなの「灯り」で生み出す「天の川」なので、「本番までの準備」を5Fでも6Fでもしている..というような時間でもありました。 5Fでは灯りやフェイスペイント、飲んだり食べたりで腹ごしらえもしながら、「準備」をしている。 6Fではショーのリハーサルをしている。

準備風景

そして、15時になると、完成した「灯り」を手にしたみんなと、竹あかりで作った「龍のおみこし」をわっしょいわっしょいと担ぎ、5Fから6Fへ全員で大移動。

5Fは、飲食以外は「クローズ」となり、イベント会場は6Fになる、という形になっていましたね。 「本番」の6F会場では、アーティストたちのものづくりの集大成が広がっていました。 普通のイベントだったらお客さんたちはエスカレーターで6Fのホールまで一気に行くと思うんですが、あえてみんな階段を、しかもお神輿を担ぎ上げながら登っていくという..。

ストリームホールの小澤さんにはさぞかし心労をおかけしました、すみません!

おみこしのシーン

階段のお神輿わっしょいシーンは、ハイライトとしてみんなが話題にしてくれていました。 こどもたちとお母さんが、6Fにお神輿を担ぎ入れながら「空がすごい」って言ってくれていた、という感想をあとでいただき、すごく嬉しかったですね。 ストリームホールの天井はとても高く、それをこどもたちとお母さんが自然に「空」とか「星が光ってる」と捉えてくれた。

高かった天井 (photo by ティンカリングタウンともさん)

「天井」じゃなくて「星空」に見えているその家族の、感受性が嬉しいですよね。

――今回の「TOKYO天の川」、フライヤーにはMusic & Art Festivalとありましたね。
芸術祭的な意味合いもあったのでしょうか。

まさに、みんながアーティストとしてものづくりをする、芸術祭という意図がありました。 ペンライトで一面の「光の海」が広がるような光景、あこがれるんですが、私たちのライブでそんなに「海」や「一面の星空」になるような大勢の方々が集まることは想像できなくて。笑 でも、自分たちの、唯一無二の「灯り」をつくり、感受性、想像力を膨らませ、みんなで「TOKYO天の川」を作り上げたかったんです。 今回はスタッフも含めたくさんの文化芸術従事者?というか、アーティストばかり集まっていました。
観て楽しむだけじゃなく、スタッフもお客さんもみーんなが作り手になるという、芸術の祭です。

――どんな「アーティスト」たちが集まったんでしょうか。

ライブショーとしては、私たち「オノマトペル」は、バンドメンバーにプラスして三味線奏者でアーティストのCHiLi GiRLさんが。敬愛するHei Tanakaのバンドメンバー、合計12人のミュージシャンたちがそれぞれ1時間ほどのライブをしました。

加えて、あざみ野のほうから、HK Studioのキッズダンサーたちが20名ほど。 竹にドリルで穴をあけ、中に照明をしこむ「竹あかり」の場を提供してくれたのは竹あかり集団「CHIKAKEN」。竹あかりのランタンは来場者みんながつくり、ステージ装飾はCHIKAKENメンバーと、イケダチカオさんが仕上げてくれました。 5Fでは「こどもDIY部」というこどもたちの自由工作の場を運営する「ティンカリングタウン」の方々が七夕かざりの場をつくり、さらにフロアには同社が実施している「こねくりケンチク研究所」というプログラムに参加しているこどもたちがマイクラを使って設計し、建てた巨大な「やぐら」が2棟。 5Fのフェイスペイントアーティストも、美術家たちが開催していた「村のバザールスナック」も大移動。

美術家ユニット「村のバザール」

ライブ中にはステージ後ろの画面にVJの工藤シンクさんが音楽にあわせたアートを投影しました。 スタッフたちも、美術家、デザイナー、イラストレーター、ライブハウス「月見ル君想フ」で働くミュージシャンスタッフたち、美大の生徒さんたち..、総勢50人以上のアート関係者のコラボレーションでした。

ダンサーチームには小さなダンサーたちも。

――クライマックスの「天の川タイム」はどんな感じだったんでしょうか。

今回のイベントに向けて、オリジナルの「TOKYO天の川」という曲を作りました。普段はオノマトペルは、変拍子の曲が多めだったりするのですが、今回はみんなで歌うイメージだったので祭囃子的な要素も入り、たくさんの友人やこどもたちもコーラス録音に参加してくれ、イベントの1ヶ月前の6月1日にリリースしまして。

工藤拓人 photo by nobu

この曲をみんなに聴いてもらい、盆踊りみたいに輪になって…..お神輿をかつぎ、周る..というイメージでした。 そして次第に照明も音楽も消えていって、声と灯りだけになる。 か細い手元の光だけになるけれど、これが私たちの「渋谷の天の川」だから、その時間を暗闇で共有、というそれだけなんですけど。笑 曲にあわせた映像があります、ぜひみてみて欲しいです。この映像は、デジタルハリウッド渋谷スタジオにて、OJT的に受講生の方々が作ってくださった中で1作品、ピックアップさせてもらいました。佐藤大輔さんの作品になります。

――最後の映像まで、アーティストコラボなんですね。
ストリームホールを選んだ理由や、感想をいただけますか。

とても広い会場で、6Fのステージ以外にも、なんと4F,5F,7F..と4フロアもあり、どんどんいろんなアイデアが湧いてきてたくさんのアーティストたちとコラボレーションすることができたんです。 ガラス張りのエスカレーターをあがり、11時開場であがってくる参加者は、あかるい光をいっぱい感じながらワクワクしてくれたと思います。

私たちは、たくさんのこどもたちの来場を想定したため、安全管理スタッフの人数を増やせず4Fは使いませんでしたが、7Fの「関係者席」やたくさんの楽屋はとても有効活用しました。 通常の音楽ライブでは、ステージにのっていない演者が演奏を覗いたり、メディアの方々が座られるのかもしれませんが、私たちは「コロナで少し距離をとってステージを見たい」という年配の方や、乳幼児を連れた方、そして1日中滞在することになるスタッフや演者の小さなこどもたちが居る場所になったり、すごくありがたいエリアになっていました。

実は今回のイベント、もともとは渋谷区民ホールでもある、伝承ホールでの実施を予定していました。予約をとりそびれて、7月1日に抑えることができず、都内中の区民ホールを探しましたが、「バンド編成のライブができる音楽ホール」で、「こどもたちが自由にかけまわれる広さがあり、電気ドリルなどを使った工作ができる」「都心」などの条件を満たすところはほかに見つかりませんでした。 結果的に、シアター形式の固定座席があったら盆踊りのように輪になって「天の川タイム」はできなかったことを考えると、フロアが広いホールでなければこのような形での実施は不可能だったと思います。 そして、前述の親子が、高い天井と美しい照明を「星空」と言ってくれたことは、ストリームホールだったからこそだと思います。

やれお神輿だ、電気ドリルだ、フードもアルコールも出したい、天井から「かささぎの橋」をつりたい..、とやりたいことを全部つめこんだ今回のイベントの内容に丁寧に耳をかたむけ、実施可能か一緒に検討してくれたストリームホールの皆様、渋谷ストリーム、そして東急のみなさまに心から感謝しております。

またご一緒できたら嬉しいです。本当にありがとうございました。

願い事のたんざく

取材協力

CONTACT

お問合せ

お見積り希望・お下見の希望・ホール使用に関するご相談など
お気軽にお問合せください。

問合せフォームへ

TEL:03-6419-9500